エンジンのエネルギー損失について
エンジンを効率良く働かせるためには、逆説的な表現にはなりますが、なんと言っても、効率を下げている事由や状況を改善することが必要です。
ガソリン1Lを燃焼させて得られるエネルギー量(熱量)は、約34.6MJ/L(メガジュール/リットル)前後で、 今はもう国際単位として使われていない「キロカロリー」などに換算してみると、約8,264kcalということになります。
ところで今日のお昼、何kcalくらいの食事されましたか?
ちなみに、ご飯どんぶり一膳(280g)で470kcalくらいです。
運動量の単位「1J(ジュール)」は、1Nm(ニュートンメートル)で、すなわち=1kg・m/s²。
これは1秒間に1メートル動かす加速度で、1kgのものを1メートル動かせてしまうくらいの力ですから、 ガソリン1Lを完全に燃やして得られる約35MJ/Lというのは、本来なら車重1000kgの車を時速60kmで35分動かせるくらいの力です。
35MJ = 35000000kg・m/s² 車の重量1000Kgで割る 35000m/s² = 35km/s² = 60x60x35 km/h・s 時速60km/hで割る 60x35 /s = 35/mt(分) |
もちろん、これは空気抵抗も、路面での摩擦係数も、エンジンの冷却のために必要な熱量もまるで考慮されていない数字ですが、 あくまで理想値としての基準ととらえ、これに近付くようにひとつひとつ、工夫を積み重ねていけたら好いですよね。
実際、プリウスなどの電気的な補助を図るハイブリッド車は別として、車重1000kgクラスの車の平均的な燃費走行距離は、 基本的に廃棄量とは無関係にほぼ20km/Lちょっとに設定されているようです。
ただし、これは設計値ですから、実際には10km~20km/Lといったところで落ち着くでしょうか。
車の乗り方では、無駄な積載をこまめに取り除くことや、走行スピードを安定させるために、 少しでもすいている道で車間距離を少し広めにとりながら、急ブレーキ/急発進を避けて走ることなどを心掛けることが大切です。
タクシー会社や、トラックでの運送会社によっては、データによる管理の上、スピードの制御や、ブレーキング、 走行路の指示などを組み合わせながら、大きな省エネ実績をあげている所もあります。
さて、この先は《内燃機関》としてのエンジンのエネルギー損失について考えてみたいと思います。
実際に、生み出された熱が有効な運動エネルギーとして使われているのは、ガソリンエンジンで、 25~30%、ディーゼルエンジンでは30~40%程度といわれています。
一番のロスは、やはり排気に残る熱です。これがガソリン車では40%もになります。
この数字を減らすのは並大抵のことではありませんが、空冷や水冷などの外部の冷却を通さずに排気ガスの温度を下げるには、 やはり《燃焼》自体を、「完全燃焼」に近付けていくしかありません。
排気ガス中に残るHC(ハイドロカーボン)や不完全燃焼の査証ともいえるCO(一酸化炭素)を減らすには、
- 燃焼部の密閉性を高める
- 吸気における適切な混合気率を守る
- 吸/排気弁の周囲をはじめ、エンジンにつくスラッジを落とし
- つねにエンジンをキレイに保っておく
- 状況・条件に合った適切な燃料を使用する
ことが基本です。
ロスの次位はエンジンを冷ますために使われる熱量ですが、これはもう内燃機関の宿命ともいえるもので、燃料の燃焼によって熱をエネルギーに換えながら、 しかもその熱で金属が溶けないようにコントロールするという二律背反を持ち合わせている以上、この部分の約20~25%のエネルギーロスは避けられません。
ただ、エンジン内部で無駄に発生している金属同士の摩擦による熱に関しては、潤滑性をより高く保つことで、 3~6%程度のロスを防ぐことは出来るかも知れません。
この辺りには、エンジンの構造自体も関わってくるところです。
続いてのロスは、よりメカニカルな部分での力学的損失です。
直線運動から回転運動へと、運動の方向性を変えることや適切な爆発を生み出すための圧縮動作などに使われる損失なので、 これは車を選ぶ時点で決まってしまうことです。
ここについても、あまりロスを取り戻すことは出来ないでしょうが、無駄な『音(含ノイズ)』を減らすことや、 より適正なエンジンオイルの粘度を見付けていくことで、数%くらいは低減できるかも知れません。